将棋電王戦FINAL第5局 阿久津八段が21手で勝利!「△28角」で開発者投了

4/11の土曜日に、将棋電王戦FINALの最終局、第5局が行われた。
阿久津主税八段 vs AWAKE だ。

AWAKEは、あのPonanzaを破って電王トーナメントを優勝した、今年最強のソフトである。

対する阿久津八段は、前期A級に在籍していた、今の棋界のトップ10に入るほどの実力の持ち主。
まさに大一番だったのだが、たったの21手で開発者判断の投了となり、
あっけなく幕が下りることとなった。

21手で開発者投了。何が起こったのか??

コンピュータvs人間の大将戦。
これまで2勝2敗の成績で迎えており、本局に勝ったほうが団体戦として勝ち越す。

まさに大一番。
手に汗握るような熱い決戦が繰り広げられる。

・・・ハズだった。

私もニコファーレの観戦が決まり、意気揚々としていた。

解説の森内九段が「阿久津さんにはなにやら秘策があるようだ」と話しておられたのが今思えば印象に残っている。

戦型は角交換型四間飛車 そう、あの手が出てきたのだ

短い対局なので一手ずつ追っていこうと思う。

▲7六歩△3四歩▲6八飛

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE①戦型は角交換型四間飛車

居飛車党の阿久津八段が、角道を空けたままの四間飛車を選択した。
この戦法自体は珍しいものではないし、解説が本家の藤井九段ということで、盛り上がる展開である。

しかしこの手は、「アレ」を秘めているなのだが。
阿久津八段は本当にその順を選ぶのだろうか。
AWAKEはその順に乗ってしまうのだろうか。

序盤から目が離せない展開であった。続けていこう。

△8四歩▲4八玉△6二銀▲1六歩

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE②端歩を早めに突く駒組み

端歩を早めに突くような駒組みを見せた。

ご存知の方も多いと思うが、これは電王AWAKEに勝てたら賞金100万円!の企画で、
見事勝利し、100万円を手にした挑戦者の形と同じだ。

狙い筋どおりになるのだろうか?

その形どおりに進むのであれば、普通とは違った順で駒組みをして、
敢えてスキを作るという、
言わばコンピュータ戦に特化したような指し方になるのだ。

と、ここまでは狙い筋であるように見えているが、もちろん変化は多くあるだろう。
果たしてどうか・・・

△8八角成▲同銀△4二玉▲1五歩

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE③端歩を突き越す

ここまでくれば、もう明らかにその研究手順を狙っていると言っていいだろう。

だが、細かいところは異なっている。
本局では後手から角交換をしているので、先手から見れば手得している。

100万円企画では、後手玉が3二まで移動した後に
先手側から角交換を仕掛けている。

それで同玉とさせ、穴熊を目指させるのだ。

相手が穴熊を選択すれば、相入玉にはなりにくい。
自分だけ入玉して、安全に勝つ、というのが100万円企画の流れであった。

しかし、本局はプロ。角桂交換だけでも十分だろう。

さらに、例え狙い筋通りにならなくても、
ここまでのような順で手得出来ているし、先手十分のように見えた。

続けよう。

△3二玉▲2八銀△2二玉▲2六歩△5四歩▲2七銀

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE④2八にスキを作った

やはりこの順だ。
先に銀冠を作って、敢えて2八の地点に角を打ち込むスキを作っている。

ここに角を打たせてしまおう、というのが、
事前から知られていた研究手なのだ。

ただ、もちろん100%打つわけではない。
打たなかった場合の変化もある。(後述)

本譜はと言えば・・・

△5三銀▲9六歩△2八角

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE⑤2八角。

一手は打たなかったものの、やはり打ってしまった。

対する▲1六香。

これ以降、長くはなるがこの打った角を捕獲できる順があるのだ。

これにて開発者判断での投了。
わずか21手の終局となった。

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE⑥1六香

まだまだ先は長いが、阿久津八段相手に角を取られてしまっては、
もう勝てない、ということがあるのだろう。

早すぎる、あっけない終局を少し残念と感じた。

詳しくは、以下の棋譜でご確認いただきたい。

This movie requires Flash Player 9

だが、その後にエキシビションマッチとして、
「△2八角打たなかったらどうだったか?」の指し継ぎをやってくれた。

運営と永瀬六段には非常に感謝している。

個人的に思うこと

ニコファーレで観戦を楽しみにしていたのだが、
21手、たった49分と言う時間で終わってしまった。

しかも、△2八角打ちそうだ!と思い、急いでトイレに行ったその3分間で、
あっという間に投了まで終わってしまっていた・・・

ニコファーレに居たのに、その悲劇の瞬間を見逃してしまった。。。

いろいろ物議を醸し出すような戦型選択・終局であったが、
あくまで一個人として思うことを書きたい。

阿久津八段の戦型選択について

私は基本的に電王戦は、プロ側のプレッシャーが非常に大きいと思っている。

将棋にのめりこんでいる人ならともかく、世間一般の目で見たら結果だけで評価される。
非公式戦のショーであるにもかかわらず、結果も問われるのだ。

今回の電王戦のニュースを見ていても、
「団体戦の第2回・第3回は負け越しているが」のように書かれることが多い。

こう書かれれば、コンピュータはプロを越えつつある、と認知されるのだ。
それはプロ棋士にとっては不本意だろうと感じている。

6割5分越えの高い勝率を誇る棋士でも、普段の対局はニュースにはならず、
「タイトル戦」や「反則負け」のようなところだけフォーカスされる。

今回の「電王戦」も、フォーカスされる戦いであることは間違いない。

そんな中で、やはり「結果」を出そうと、
なるべく「勝ち」に近づける戦型を選択したということは、
私は納得出来る。

狙い筋の角を打ってこかったり、相振り飛車になる変化もあったり、
そういうリスクを背負っている。
事実、第3局・第4局は、想定局面で戦おうとして、負けてしまっている。

想定通りにならないことだって十分にあるのだ。

だが難しいのは、将棋ファンからは逆の視点も求められるところだ。

 「阿久津さんの将棋が見たい」
 「面白い将棋が見たい」

これらの意見が上がるのは、十分に想定出来るところだ。

勝ちにこだわるのか、自分らしい将棋を目指すのか。

勝ちにこだわれば、少しでも勝ちが近い戦いを目指し、
対コンピュータ戦に特化した方法を選ぶことも必要になるだろう。
今回のように。

私の本音で言えば、相居飛車の戦いが見たかった。
阿久津八段が出るからには、阿久津八段の将棋が見たかった。

だが、阿久津八段のその苦渋の選択も理解できるので、「納得出来る」という表現になった。

巨瀬さんの21手での投了について

コンピュータ将棋は何のためにあるのか。
巨瀬さんは元奨励会員でもあり、棋力をより向上させることを目的としていた。

今回のように「ソフトの穴」を狙うような戦いになったことを残念に思っているようだった。
私のブログでも書いたような研究手順でアマチュアが勝利しており、

「アマチュアの人が指した戦法を指すとは残念」とおっしゃっていた。

・・・だが。

それでも、21手の投了はしないでほしかった。
AWAKE自身の評価値が離されるまでは、投了しないでほしかった。

例えば、手が進んで評価値が-1000ついてしまっていたなら、
そこで投了するのが良かったのかなと思う。

「ソフトの穴を狙った手」のように言っていたが、
コンピュータはその手を最善と判断して指したのだ。
局面判断も、読み手も全てそのプログラムで作り出して電王トーナメントを優勝したではないか。

優勝したプログラムを信じてほしかった。

それで負けるのであれば、「ではどうすれば勝てるだろうか」と試行錯誤するのが、
プロの開発者の姿勢ではないかと思う。
 (今回のやねうら王の磯崎さんのような姿勢は好きだ)

例えば第2戦のSeleneは、普通の将棋ではほとんど出てこないような、
歩・角・飛の不成りを読まずに計算を省くという工夫で、
少しでも「正当な」手の読みを強くしようとした。

結果、今回は裏目に出てしまったが、
そういう工夫がさらに強い将棋ソフトを生み出すハズだ。

「そういう戦法をプロとして選ぶのは残念」と言っていたが、
確かにその側面はあると私も思う。

だが、一方的にプロ側の姿勢だけ咎めるのはいかがなものだろう。

プロが負ければ、その結果だけで評価されかねない。
その事情も、多少は推し量るべきではなかろうか。

電王戦について

興行なのか、真剣勝負なのか。
勝つことが目的なのか、いい将棋を指すのが目的なのか。

そのあたりを考えさせられる、いいテーマになったと感じた。
同時に、人間vsコンピュータという単純な構図でもなくなってきたかなと感じた。

今後どういう流れになるかはわからないが、将棋はこれからも応援していく。

プロ棋士はもちろん、コンピュータ将棋もだ。

いろいろなテーマを考えさせられる、いい機会となった。

主催者、プロ棋士、開発者、解説者、その他の関係者に改めて感謝する。

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